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【四日目①】読書感想 赤松利一『藻屑蟹』

どうやら三日坊主は脱せたようです。

さて、今回は最近読んだ本の感想を書きたいと思います。書評、というと大げさなので、読書感想文という感じです。

今回読んだ本は 赤松利一『藻屑蟹』です。

 

藻屑蟹(第1回大藪春彦新人賞受賞作)

藻屑蟹(第1回大藪春彦新人賞受賞作)

 

 (Amazonのリンクも簡単に貼れてしまうんですね…感動!)

 

この本、電子書籍です。普段は紙の本ばかり読む私ですが、たまたまKindleのRrime Readingで無料で読めるのを発見してダウンロードしてみました。Prime Readingは個人的にあまりそそられる本がないので、正直期待せずに読み始めたのですが……これは面白かった!

 

あらすじです↓

 

福島第一原発にほど近い、とある町。原発事故が起き、たくさんの避難民が主人公のいる町に流れ込んできます。主人公は30代半ばのパチンコ屋で働く男で、地元で安月給で働きながら鬱屈した日々を送っています。「自分の、大切なはずの時間を切り売りしながら、毎日を何の当てもなく」過ごすことに危機感を覚えながらも、金がないためそこから脱することができないもどかしさを抱える毎日。そんなある日、高校時代の友人たちとファミレスで駄弁っていると、友人の一人が原発作業員の話題を出してきました。危険が伴う分、高給の仕事らしい。その数日後、主人公は、友人の一人から農地除染の仕事の手伝いを持ちかけられます。この現状を変えられる大金が手に入るという、儲け話として……。

 

読んでいて見事だと思った点がいくつかあります。まず、主人公の抱える閉塞感がとても生々しく伝わってきます。ただ生きるための金を稼ぐだけの毎日と希望の持てない未来。それに加え、原発から避難してきた人々が、政府から支払われた見舞金でろくに働かずとも人並み以上の生活をしていることが主人公のいらだちを刺激します。

正直、避難民の描写には賛否両論があると思います。が、「被害者」として描かれる避難民像とはまた異なる、なんともいえないリアリティが感じられます。著者は除染作業員の経歴を持つため、確かにこのような環境を身近に目の当たりにしてきたのかもしれません。

また、主人公の見る夢が少しずつ変わっていく、このへんの描写も見事だと思いました。金、金、金……この資本主義社会に生まれ落ちたからには、どこまでいっても金の束縛からは逃れられませんから。

あとは、ディティールの描写を通じて物語が問いかけたいことを淡々と語る「空気づくり」がスゴい。タイトルにもなっている藻屑蟹が登場する場面はすっと頭に浮かんでくるし、強く印象に残ります。こういう物語の見せ方、好きだなあ。

 

短編ですが読み応えのある一冊でした。続編もあるらしいし、読んでみたいですね。オススメです。