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【二十三日目】読書感想 落合裕介(原作:高田侑)『うなぎ鬼』

こんにちは。

今回紹介するマンガは、落合裕介(原作:高田侑)『うなぎ鬼』です!

ネタバレはなしです!

 

うなぎ鬼 (1) (ヤングキングコミックス)

うなぎ鬼 (1) (ヤングキングコミックス)

 

 

あらすじ。

「知ってるかい?うなぎってのはタンパク質ならなんでも喰っちまうんだそうだ……なんでもだぜ」。借金が払えなくなり窮地に陥っていた主人公・倉見は、その並外れた体格の良さとある特徴を買われて社長にやとわれた。仕事は借金の取り立て。同僚の富田はスケコマシで管理売春の元締めをしている。そう、社長の会社は法に触れかねない仕事を引き受ける何でも屋だった。

ある時、倉見と富田は社長に朝早く呼び出される。「黒牟」という場所に来い、という社長の指示に従いたどり着いたのは、東京にはあるまじき荒んだ雰囲気の町だった。案内された「マルヨシ水産」は社長の弟が経営する会社で、鰻の養殖を手掛けている。二人に命じられた臨時の仕事とは、手当15万円と引き換えにある物を養殖場まで運ぶというものだった……。

 

掴みはばっちりですよ!インパクトのありすぎる一文から始まり、第一話の時点で主人公たちは「やばいもの」を運ばされる。鰻はタンパク質ならなんでも食べる、そのうなぎの養殖場まで「五、六十キロのコンテナ」を「15万円もらって」届けろと言われるのです。これってどう考えても人間のした……。

 

2016年ごろの一時期、ネット広告でよく宣伝されていたので見覚えのある方もいるかもしれません。ホルモン焼きをごちそうになっていたら、口に入れた肉の中から「人間の歯」が出てきた……!?みたいなやつ。

あの部分だけ切り取るとサイコホラーものっぽいのですが、過剰演出のような気もします。ホラーといえばホラーなのですが、どちらかというと人間の心の闇に焦点を当てた部分が大きい作品です。お化けや幽霊が出てくる話ではありませんが、人間の営みに関わるじっとりとした薄気味悪さがありますね。

 

登場人物もあまり多くなく、主に主人公・倉見と同僚の富田、謎めいた社長、マルヨシ水産の従業員たち、管理売春をしている女子高生・ミキくらい。ですが、徐々に生み出されるどろりとした人間関係が息苦しくなるような雰囲気を作り出していています。主人公・倉見はもともと裏世界の人間ではなく、むしろかなり素朴な性格をしている男ですので、彼が日陰の社会の薄気味悪い雰囲気をそのまま読者に伝える役割をしています。また、社長やマルヨシ水産の従業員の一人、秀さんの得体の知れなさも雰囲気づくりに一役買っています。こういうアングラもののフィクションって、その筋の人間の描写がリアルに感じられるかどうかで面白さがだいぶ変わってくると思うのですが、この作品は主人公をただの駒とみなしているのか情をかけているのかわからない社長や、顔に大きな傷のある不吉な印象の秀さんなどはいいキャラクターですね。

 

読んでいて一番印象に残ったのは、「黒牟」という場所。最初に訪れたときから荒廃して不吉な雰囲気を漂わせていた黒牟ですが、ボロボロの服を着て逃げ回る少女を目撃したり、広告にも出てきた「やたらとうまいホルモン屋」で自分だけ肉を食べていたら急に人間の歯みたいなものが口の中に入ってきたりと、なにやら恐ろし気な空気がビンビン漂っています。が、黒牟が本当はどういう場所かを主人公が知ったとき、それらが単に恐ろしいものではなく、寂しく悲しい要素をたぶんに含んでいたことをも理解するのです。

黒牟ほど極端ではなくとも、どこか似た雰囲気を持つ場所というのは多くの人が知っていると思います。架空だけどなんだかありそうな町、ということで、原作者自身が巻末に書いていたようにうまく作り上げているなと感じました。恐れや偏見は、それを生み出す人間の心の中にこそ本質がある。それが暴走してしまうと、ときに大きな災いを招き寄せてしまう……というのは、ホラーの設定でありながら真実を突いていると思います。

 

全三巻とコンパクトにまとまっている作品でおススメです。

 

原作者の高田侑は小説をメインに書いているそうで、『汚れた檻』というホラー物が面白そうだとAmazonで発見しました。淡々と人間の心を描く作品が私は好きなので、この小説もいつか読んでみたいと思っています。

 

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2018/12/5

高田侑『汚れた檻』を読みました!

 

nikogoriofmind.hatenablog.com