精神の煮こごり。

毎日一回以上更新。次の目標は三ヶ月継続!

【三十四日目】読書感想 田濤・呉春波『最強の未公開企業 ファーウェイ』

こんにちは。もりひびきです。

今回紹介する本は田濤・呉春波(内村和雄訳)『最強の未公開企業 ファーウェイ』です。

 

最強の未公開企業 ファーウェイ: 冬は必ずやってくる

最強の未公開企業 ファーウェイ: 冬は必ずやってくる

 

 

ビジネス書ですので、あらすじというか概要を。

かつて人民解放軍で下級士官を務めていた任正非は、退役後の1987年にビジネスを始めた。わずか数人の従業員で始めた事業は、通信機器の代理販売からスタートし、今ではGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)に肩を並べる世界有数の通信事業会社ファーウェイ(Huawei華為技術有限公司)へと成長した。ファーウェイはどのようにして奇跡の成長を遂げたのか?CEO・任の経営哲学とは?ファーウェイの歴史、企業文化、経営理念をまとめた一冊。

 

最近なにかと話題のファーウェイ。ここ数年、日本ではAndroidスマートフォンのメーカーとして徐々に知名度があがりつつある。比較的廉価で性能の良いスマートフォンを提供したり、国内外の通信基地局に使われる機器を提供したり、次世代の通信規格である5Gの普及を進めたりとまさに躍進が目覚ましい企業だが、一方で「中国企業」というイメージからか、ネット上では「通信が傍受されているのでは?」「個人情報が中国へ筒抜けなのでは?」となにやらきな臭い噂が流れている。アメリカのトランプ大統領が先日、日本を含む同盟国に「ファーウェイの製品を使うな!」と通達を出したり、オーストラリアが5Gネットワークへの参入を禁止したりとニュースでもよく取り上げられている。

headlines.yahoo.co.jp

headlines.yahoo.co.jp

 

個人的にファーウェイのスマホは使用していないが、そのコストパフォーマンスの良さはあちこちで聞く。一方、バックドアや個人情報規約の問題、ベンチマークの詐称などなにやら悪い噂がネットを中心にささやかれていることも知っている。

そこで、そもそもファーウェイってどんな企業なのだろう?と好奇心を刺激されてこの本を手に取ったのだった。

 

最初に感想を述べると、ファーウェイという会社の歴史、経営者の理念やモットー、独自の企業文化やIT業界で生き残ってきたエピソードなどを知ることはできた。しかし、全体的の印象としてはひたすらファーウェイのすばらしさを称賛するような調子で、あまり読み物として面白くはなかった。中立的な立場から書かれた概略的なことを知りたかったので、そういう意味では自分の目的には合わない本だったのかもしれない。

「うだつのあがらない退役軍人」である任氏がどのようにしてファーウェイという会社を育ててきたのか……はよくわかった。確かに、他の業界に比べてもとりわけ変化が目まぐるしいITの世界では、昨日まで栄華を誇っていた巨大企業があっという間に衰退し、無名のベンチャーがある時から急に世界に名をとどろかす大企業に成長する、ということが日常茶飯事なのかもしれない。そんな超過酷な環境で、ファーウェイは「一匹狼」として参入し、他の企業が嫌がるような事業を一身に引き受けたり、極端なまでの「顧客第一主義」を貫いたり、社員が文字通り不眠不休で事業を発展させてきたりとすさまじいまでのハングリー精神を発揮して生き残ってきたそうだ。チベットの局地に基地局を設置したエピソード、「マットレス文化」の話などは鬼気迫るものがある。正直、ここまで「熱く」「泥臭い」エピソードがあるとは想像もしていなかったので、そこは読み物として楽しむことができた。また、任氏の独自の経営理念や、他の企業にはないユニークな特徴(わざと上場しない、社員全員が社の株を持っている、7000人を集団辞職させ再雇用するなど)を知ることもできた。なかでもたびたび登場するキーワード「灰度哲学」は特に印象的だ。人間性の善し悪しを含めた社員の個性を「灰度」と呼び、社に貢献できる能力ある人物ならどんな者でも受け入れ、評価するという、まさに文字通り「清濁併せ呑む」マネジメント手法には任氏の価値観がぎゅっと凝縮されているように思う。

 

いっぽうで、任氏の言葉を基にファーウェイを描いているからか精神論めいた話もかなり多い。そのほぼすべてが任氏やファーウェイをヨイショするものなので、読んでいていささか疲れるし、なんにでも疑り深い僕などは「ほんとうにそうか~?」とうさん臭く感じるところもないわけではなかった。どうしても提灯記事感があるというか……。この本は社史のようなもので、客観的な分析や他企業とのデータに基づく比較などはない。そういうものを求めて読むと肩透かしを食らうと思う。

また、先に述べたようなバックドア・通信傍受問題についても(当然というべきか)ほとんど触れられておらず、本文の最初の最初、「刊行に寄せて」の部分でわずかに述べられているだけだ。それも、寄稿者の主観に基づく断定(「ファーウェイが製品を通じて他国の通信を「盗み聞き」していると言うが、そんなことをするには任氏は賢すぎる」)に過ぎない。また、ファーウェイは民営企業であるので中国共産党との政治的つながりはない、と本文では述べられているが、あくまで任氏の言葉による説明でしかないので、本当のところはわからない。結局、この本を読んだだけでは「噂」の真偽は確かめることができなかった

 

とはいえ、文体は読みやすいし「熱い」ところも多いので、ビジネス書として好む人がいるというのもよくわかる。個人的にはそこまで高評価ではないが……。そもそもビジネス書というジャンルは、内容の当たりはずれが非常に大きいし、自己啓発っぽい本も多いので、あまり書かれていることは鵜呑みにしないほうが良いと個人的には思っている。

 

あと、内容とは全然関係ないんだけど、ちょくちょく出てくる中国のことわざや故事成語などが面白かった。「鶏肋」とか。鶏ガラにはほとんど肉はついていないが、煮込むと良い出汁がでるということから、「それほど値打ちはないが、捨てがたいもの」を指すんだって。へぇー。やっぱ中国、何千年もの歴史があるからか格言もたくさんあるようだ。こういう蘊蓄って面白い。