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【五十日目②】読書感想 西山雅子『"ひとり出版社"という働きかた』

こんにちは。もりひびきです。

今回紹介する本は西山雅子編『“ひとり出版社”という働きかた』です。

 

“ひとり出版社

“ひとり出版社"という働きかた

 

 

「ひとり出版社」。聞きなれない言葉だ。文字通り、個人で出版社を立ち上げ、本を世に売り出すことをいうらしい。こう書くとよくある起業本のように思われるかもしれないが、この本は「ひとり出版」のノウハウやテクニックをまとめたものではない。ひとり出版社を立ち上げたさまざまな人を取材し、なぜ個人で出版社を立ち上げるのに至ったのか、どういう思いで本を作っているのか、出版社として今後どのような活動をしていきたいのかをインタビューした本なのだ。

ちょっと目次を見てみよう。この本では次のようなひとり出版社が取り上げられている。

 

「小さい書房」安永則子

「土曜社」豊田剛

里山社」清田麻衣子

「港の人」上野勇

「ミシマ社」三島邦弘

「赤々舎」姫野希美

サウダージ・ブックス」浅野卓夫

「ゆめある舎」谷川恵

「ミルブックス」藤原康二

「タバブックス」宮川真紀 ほか

 同書目次より

 

調べてみると、ここにあげられている出版社のうちいくつかは、すでに「ひとり」ではやっていないものもあるようだ。例えば、土曜社のホームぺージを見てみると「執筆・製作陣」という項目には豊田氏以外にも20人ほどの名前が連ねられている。サウダージ・ブックスは2016年に株式会社瀬戸内人というベンチャー企業になったとブログで告知されている。

しかし、元をたどればやはり出発点は「ひとり」であり、どのような思いをもって出版社を立ち上げるに至ったかという個々のエピソードは読みごたえがある。本好きなら共感できる内容も多い。また、大手出版社をとりまく商業出版の弊害や、本が売れなくなっている世の中で若い人にどうやって本を手に取ってもらうか、これからの出版業の在り方など、自分で出版を手掛けているからこそリアリティのある言葉として語られる本への思いが心を打つ。

 

個人的に、特に共感したくなったのは「土曜社」と「サウダージ・ブックス」の2社。今の出版業界は、特に大手出版社を中心に、商業主義が浸透して売れる本ばかり作るようになっている。しかし、売れる本イコール良い本とは限らない。行き過ぎた商業主義は出版業界の自由さを疲弊させ、新人の編集者が育たない環境や優れた作品を書く新人作家が日の目をみない状況を作り出している。そんな現状を変えるためにも、ひとりで出版社を作るという人が増えているのだと思う。

また、東京の一極集中もこれからは徐々になくなっていくのではないか、というサウダージ・ブックスの主張も一理ある。ネットと電子書籍の普及で、東京以外の場所でも書籍を作るハードルは下がりつつある。すぐには業界が変わることはないだろうけど、長い目で見たら変化は起きていくだろうし、多様な書籍がや世に出るためには安易な商業主義に流されない版元も必要だ。この本を読んで、なんだか自分もそういうところに携わりたいという気持ちになった。

最近読んだ本の中で一番良かったかもしれない。